不整脈の一つである『心房細動』という言葉をよく耳にします。
特に、心房細動≒脳梗塞の原因⇨半身麻痺、寝たきりというイメージでとらえられている皆さんも多いはずです。
今回はこのちょっと怖い心房細動について、カテーテル治療をご紹介したいと思います。
心房細動の症状は、動悸、脈の乱れ、脈が飛ぶ感じや、胸痛、胸部圧迫感といった狭心症様の症状、息切れ、むくみといった心不全様の症状があります。なかには、症状がみられない無症候性心房細動と呼ばれるものがあり、気付くのが遅れる場合があります。
一つは、症状の出現による生活活動(QOL)の低下があります。突然の動悸で胸が苦しくなり、不安感から外出が困難となったり、夜間の動悸では不眠症の原因にもなります。
二つめは、脈が速い『頻脈性心房細動』が持続すると、息切れやむくみなどの心不全症状が出現します。
逆に、脈が遅い『徐脈性心房細動』が持続すると、心不全症状だけでなく、失神といった意識が消失する状態が起こることがあります。
そして三つめに最初に挙げた脳梗塞の原因といわれる血栓塞栓症があります。心房細動は脈が速くなったり遅くなったり、一定のリズムではありません。すると、心臓内の血液によどみが生じます。
これによって血栓と呼ばれる血の塊が生じ、心臓から全身に流れていきます。この血栓が頭に飛べば脳梗塞、心臓に飛べば心筋梗塞、手や足に飛べば血流が途絶し壊死の原因となってしまいます。
初期の心房細動の原因として多いのは、肺静脈からの電気的異常興奮です(図1)。
肺で酸素を取り込んだ血液が左心房に戻ってくる血管を肺静脈と呼んでいますが、この肺静脈から異常な電気興奮が発生しやすく、この興奮が心臓の左心房に突然入り込むことによって正常な心臓のリズムを狂わせて心房細動が起こります。
この初期の心房細動を『発作性心房細動』と呼び、一週間以上心房細動が続くと『持続性心房細動』、一年以上では『長期持続性心房細動』と呼び方が変化します。また、心房細動が停止する可能性が極めて低い場合は『永続性心房細動』と呼ばれます。
図1:心房細動 波形のメカニズム
(心電図ナビカードより引用)
心房細動では血栓を生じさせないようにすることが大切ですから、抗血栓薬の内服が必要となる場合があります。
一般に心房細動は風邪とは異なり、薬を飲めば治る病気ではありません。このため、現在ではより治療効果の高いカテーテルアブレーション治療が選択されることが多くなっています。
前述したように心房細動は肺静脈からの異常な興奮が心房に伝わることが引き金となります。心臓の筋肉は熱が加えられたり冷やされたりすることで電気が伝わらなくなる性質がありますので、原因となる肺静脈周囲に熱を生じさせて異常な電気を心房に伝わらなくする治療があり、これをカテーテルアブレーションと呼びます。
高周波アブレーション治療では、カテーテルと呼ばれる細い管を心臓まで挿入し高周波エネルギーを使用して心筋に熱を生じさせます(図2)。静脈麻酔で寝ているうちに治療が終わります。術後は3時間で歩行が可能となりますし、3泊4日の入院で体の中に異物が残ることもありません。
治療中は磁場を使用した3Dマッピングシステムを使用することで心臓を可視化し、より安全な治療が可能となりました(図3)。
図2:高周波アブレーション
▼透視画像(心臓を正面から見た図)
左心房を背中側から見た図
術前は肺静脈の付け根に電気の活動があるが、治療により肺静脈内の電気が消失している。
▼心房細動治療前
▼心房細動治療後
図3:3Dマッピングシステムの一例
地図アプリにも使用されているGPSと同じ原理を使用している。従来の透視画像に加えてより鮮明に心臓や不整脈を可視化することが可能となり、安全な治療につながっている。
両心房を左前側から見ている図
心房全体を電気が反時計回転に回っている。
治療については主治医と十分に相談して決めることが大切です。当院の循環器内科には専門の医師が在籍しています。
また当院は、この地域では珍しい不整脈研修施設の指定を受けており、さまざまな選択肢のなかから最適な治療法を提供することが可能です。
不整脈についてご不安な点やご不明な点がございましたら、いつでもお気軽に行田総合病院循環器内科外来へご相談ください。お待ちしております。