皆さんはダ・ヴィンチ(da Vinci® Surgical System)と呼ばれる手術用ロボットをご存知でしょうか?
ダ・ヴィンチはルネッサンスの巨匠レオナルド・ダ・ヴィンチの名を冠した高性能手術用ロボットのことです。
ダ・ヴィンチはもともと、負傷者を治療するために1990年代にアメリカで軍事用に開発されたロボットですが、現在では高度な腹腔鏡下手術を行うために使用されています。
ダ・ヴィンチは4本のアームと呼ばれる腕を持ち、それぞれに腹腔鏡とインストゥツルメントと呼ばれる器具を装着して手術を行います。
12ダ・ヴィンチによるロボット支援手術の様子。右奥サージョンコンソールに座るのが術者。
患者さんの側に立つのが助手を務める医師。看護師、ME(臨床工学技士)の協力を得て手術は短時間で進行していく。
インストゥツルメントは人の手首の可動域をはるかに超える自由度を有し、手ぶれ防止機能と相まって手術の精度がさらに向上します。
術者はサージョンコンソールと呼ばれるボックスの中に座って、手術を行うので、仮に患者さんが医療過疎の地域に住んでいたとしても、ダ・ヴィンチがあれば遠隔操作によって高度な手術を受けることも可能です。
近年さまざまな手術でダ・ヴィンチの導入が始まっています。
大腸領域では直腸癌手術が2018年4月より保険収載され、2022年4月からは結腸癌手術まで適応が拡大しました。
3ペイシェントカートをセッティング。
45手術室看護師。
67ダ・ヴィンチをはじめあらゆる医療機器のセッティングからメンテナス、術中のモニタリングはMEが行っている。
大腸癌に対しては、多くの施設で腹腔鏡下手術が行われています。
しかし骨盤が狭い男性や肥満の患者さんでは、腹腔鏡下手術でも操作に難渋する場合があり、途中でお腹を大きく開ける開腹手術に移行する場合もあります。また、直腸癌手術では排尿や性機能をつかさどる神経が直腸の周囲を走行しているため、手術後に排尿機能障害、性機能障害が起こりやすいことが知られています。
ダ・ヴィンチは、小さな傷から手術を行うので、腹腔鏡下手術と同様、体への負担や痛みも少なく、早期社会復帰が可能です。
さらに3次元画面を通して術者は臓器を立体的に認識できるので、腹腔鏡下手術では難しい狭い骨盤内でも、術者の思い通りに手術操作を行うことが可能です。これらの特性により、ダ・ヴィンチ手術では、腹腔鏡下手術よりも排尿機能障害、性機能障害の低減が期待され、肛門に近い直腸癌でも肛門温存が可能となります。
大腸癌患者さんの多くは手術によって根治が得られることができます。癌を遺残なく取り除き、機能障害をできるだけ起こさないためには、ダ・ヴィンチ手術は非常に有用であると考えられ、当院では積極的にダ・ヴィンチ手術を施行していく予定です。
2025年4月より当院外科に赴任いたしました、渋谷紀介と申します。
獨協医科大学を卒業後、獨協医科大学第二外科へ入局し、本院と関連病院で一般・消化器外科として研鑽を積みました。
2020年からはロボット支援手術に取り組み、これまでに100例以上のロボット手術を執刀しています。
また、他病院での手術支援やロボット手術指導も積極的に行っています。
大腸がん領域の手術は、腹腔鏡手術が一般的ですが、近年、ロボット手術が増加しています。
ロボット手術は3Dモニターによる拡大視効果で細部までよく見え、外科部長(下部消化管担当)渋谷紀介医師手振れがなく、多関節を有しているため精緻な手術が可能です。特に直腸がん領域では、肛門温存や排尿機能・性機能障害の低減が期待されています。
また、大腸がん以外にも、肛門疾患にも力を入れています。痔核や痔瘻、直腸脱などの身近な疾患も手術していますので、お気軽にご相談ください。どうぞよろしくお願い致します。